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    月の影 影の海〈上〉〈下〉 十二国記 「なぜ、あたしをここへ連れてきたの?」

    一番最初のレビューは、私の心のバイブル、「十二国記」にしたい。
    シリーズものではあるが、その中の第一作目『月の影 影の海』がオススメだ。
    数年前、アニメ化されたのでご存じの方もいるだろう。
    しかし、アニメ版はオリジナルキャラが登場したり、オリジナルストーリーが
    挿入されたりと、原作の世界観をぶち壊す残念な仕上がりであった。
    私は、アニメよりもまず原作を読んで欲しい!と声高に叫びたい。
    ■ストーリー
    所在なく日々を過ごしていた女子高生・陽子の前に、ある日突然ケイキと名乗る金髪の美しい青年が現れる。
    「あなたは私の主、お迎えにまいりました」
    ケイキに連れられやってきた異世界で、陽子はケイキ一行とはぐれ妖魔たちから命を狙われることに…。
    なぜ自分はこの世界にやってきたのか、自分は何者なのか。陽子の孤独な旅が始まる。

    ■主観的レビュー
    異世界転移、戦う女の子、古代中国風世界が大好物な私にとってド・ストライク作品である。
    「金髪のイケメンが従者!」と、陽子とケイキのロマンスを期待された方。
    残念なお知らせだが、この作品は全体を通して恋愛描写というものは皆無に近い。
    個人的には陽子と、下巻で登場する楽俊の間の微妙な空気を
    勝手に恋心と解釈して妄想を楽しんでいるのだが、
    作者的に、陽子×楽俊の間にあるのは友情として描いているだろう。
    恋愛も友情もアッサリ味なので、その辺の萌え展開、たぎるような情熱を期待すると、
    見事に裏切られるのでご注意いただきたい。
    主人公の陽子が、理性的かつ男性的な性格であることも、恋愛に発展しづらい一因だ。

    では、何が面白いのかというと、陽子の心の葛藤、人の心の光と闇、緻密に設定された世界観だ。
    上巻は基本的に陽子の孤独な旅がメインなので、ともすれば退屈な展開になりがちなのだが、
    時間を忘れて一気に読み切ってしまうほど、陽子の心の動きがリアルで引き込まれる。
    二次元世界だから…というご都合展開がないのが歯がゆいが、だからこそ面白い。
    そこから下巻に入るとようやく陽子にも助っ人が現れ、次々謎が明らかになっていく。
    「この紋所が目に入らぬか~!」と言わんばかりのラストが用意されているので、
    そこまで陽子と苦労を共にしてきた読者は、胸のすくような読後感を味わえるのである。

    私がこの作品を初めて読んだのは、陽子と同年代の頃だったので、
    陽子と同じ目線に立って、共感しながら読んだが、
    大人になった今読んでも、心にズシンとくるものがある。

    ファンタジーだからと言って侮るなかれ。
    チープさは微塵も感じられない、重厚感とリアリティーあるクオリティーの高い作品なので、
    老若男女問わず楽しめるだろう。

    講談社X文庫(ホワイトハート)版、2012年から新装されている新潮文庫の完全版がオススメ。
    というのも、そちらは挿絵付きなのだ。
    十二国記の世界を鮮やかに彩ってくれる挿絵で、さらに物語の中に引き込まれること請け合いだ。
    2013/09/04(水) 12:30 小説 記事のURL コメント(0)
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