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不器用な少年少女たちが、もがき迷いながら恋愛する姿を描いた短編集。
この作家は、独特の世界観を持っている。
普通の少女漫画だと思って読むと毒されるのでご注意いただきたい。
だが、その分心に響くものはとてつもなく大きい。
クセがあるが、繊細かつ丁寧に描かれた絵も、一見の価値あり。
■ストーリー
『教科書は教えてくれない』(表題作)
怖いくらいキレイで、誰も寄せ付けない久世。そんな久世を子供の頃から秘かに好きだった文緒。
15歳になった今、「誰とでもヤる軽い男」と噂される久世に、文緒は再び接近する。
『透明な時間』
学校の階段から落ちて死んだ友里は、自分を窮地へ追いやった同級生に報復するため、
その弟に取り憑く。利用するために近付いたはずが、彼のことを知るたび放っておけなくて…。
『彼女の煙草』
クラスのはみ出し者・合屋(あいや)の煙草を拾った安英(やすえ)。煙草を返すよう催促され
咄嗟に捨てたと嘘を吐いた安英に対し、合屋は「キスさせて。煙草が吸いたくなる度に」と
挑発する。
『臆病なきみの手』
トラウマを抱える糸乃(しの)は告白してきた岳臣に「結婚するまで肉体的な接触は一切無し」と
その場しのぎの嘘の条件を突き付ける。それでも一途な岳臣に心を動かされる糸乃だったが、
そんな二人の前に糸乃の元彼が現れ…。
『教科書には載っていない』
教師である広竹に恋する中学生の日野川は懸命にアプローチするが、広竹はいつもつれない態度。
そんなある日、広竹にお見合いの話が持ち掛けられ…。
■主観的レビュー
この作家の独特の世界観は、好き嫌いを通り越して中毒になる。
ストーリーそのものは割とありきたりで、ハプニングや事件も少なく淡々とした調子で
進んでいくのだが、その描き方、表現の仕方がとにかく美しい。
息苦しくなるような感覚、身体にじっとりとまとわりつくような空気。
そんな目には見えないものが本の中に表現されている。
言葉に表しがたい世界観は、直接読んでみないと伝わらないだろう。
少女漫画と言われるとぱっと思い浮かぶ「可愛らしさ」「ポップ」「心弾むストーリー」
とは真逆の世界が広がっている。
何とも言えない読後感を、是非とも味わっていただきたい。
個人的には『教科書は教えてくれない』『彼女の煙草』の二作が好きだ。
曖昧な関係の少年少女の、危ういバランス感と、グッとくるラストが印象的。
何度読んでも感動が色褪せない。
また、表題作とリンクしている『教科書には載っていない』。
個人的に教師と生徒の恋愛ものは好きではない。
どんなにお互いが惹かれ合っていても、どんなに美しく描かれていても、
教師が生徒の気持ちに応えるという展開が、倫理的に受け入れられない。
しかし、この『教科書には載っていない』の教師は、若さゆえに突っ走ってしまう少女に対して
流されることなく冷静に対処しているので、比較的好感が持てた。
登場人物にそういった選択をさせるのも、この作家らしいのかもしれない。
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プロフィール
涼木ゆり
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