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一体何年前の作品だろうと発行年を確認してみたら1999年であった。
レビューするためにさらっと読み返してみたのだが、
今読んでも完成度の高さに感嘆する。いわゆるタイムトラベルものだが、
意識だけトリップ・一週間をランダムに移動・同じ時間は繰り返さない
という設定なのが特徴的。推理と恋愛も楽しめる、盛りだくさんの一作だ。
■ストーリー
ごく普通の女子高生・鹿島翔香(しょうか)は、ある日自分が昨日の記憶を喪失していることに気付く。
そして、日記を調べると、昨日の自分が書いたと思しき、見覚えのない文章があった。
「あなたは、今、混乱している…若松くんに相談しなさい。
最初は冷たい人だと思うかもしれないけど、彼は頼りになる人だから。」
学校でも秀才と噂が高い若松和彦は人を寄せ付けないタイプ。
今までろくに会話をしたこともないのになぜ和彦?
そう疑問に思いつつ、翔香は和彦に声を掛けるが…。
■主観的レビュー
読んでいる最中は、一体何がどうなっているのかと混乱する。
主人公は自分で移動先を選べないし、過去に行ったり未来に行ったりと時間の移動方向もランダム。
だが、最後まで読み終わってみると、なんとよく構成されたストーリーだろうと舌を巻く。
プロローグからエピローグまで、すべてが繋がって、ようやくこの作品の凄さを思い知るのである。
この作品、私は実はラジオドラマから入った。
ラジオドラマも十分楽しめたが、やはり原作の方がより緻密に構成されている印象を受ける。
主人公のサポーターとして登場する和彦。確かにかなりの秀才なのだが、とにかくつれない性格。
翔香がタイムリープした日によって、心強いサポーターになってくれるときもあれば、
翔香を変人扱いしてまったく相手にしてくれないときもある。
それもそのはず、和彦は通常の時間の流れで生きているが、翔香は過去と未来を行ったり来たり。
事情を知る前と後の和彦では翔香に対する態度も違ってくる。
読者は翔香と同じ視点で進んでいくので、和彦に冷たくされたかと思ったら優しくされたりして、
どうしたら和彦を信じさせることができるのかと、ぐいぐいストーリーの中に引き込まれていく。
苦労を重ねてようやく和彦を味方に付けたときの達成感と言ったら表現しようがない。
また、この作品は恋愛要素も含まれているので、胸キュン展開がお好きな方にもオススメできる。
和彦の、高校生とは思えない頼もしさとクールさは、翔香でなくてもついついときめいてしまう。
感情的で真っ直ぐな翔香と、無愛想でS気質の和彦が次第に惹かれ合っていく姿は、
見ていて何とも微笑ましい。
ラストからエピローグに掛けてがニマニマの絶頂だ。
翔香と共に混乱しながらも、真実を突き止めハッピーエンドを迎えたときの高揚感を
是非皆さんにも味わってもらいたい。
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プロフィール
涼木ゆり
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